高校中退、ギャルサー、自殺未遂、キャバ嬢、二度の離婚からの歯科衛生士。

様々な苦難を乗り越えて、ハミガキ団の一員として本領を発揮する歯科衛生士・元黒ギャルさん。

壮絶な経験があっても「毎日幸せ」とつぶやく秘訣はなんぞや。

希望を失うあなた、必見です。

元黒ギャル(本名非公開)
歯科衛生士2年目、複数の歯科医院に勤務。現在、歯科衛生士の傍らハミガキ団 東京支部としてイベント活動中。

一応、高校入ったんですが在籍してただけ。行きたいから行ったわけじゃなかったので本当に遊んじゃいました。同じクラスだった子に「先輩がギャルサークルやるからいこうよ」って誘われたのをきっかけにギャルの道に進みました。元々そんなに勉強好きじゃなかったので高校は中退したんです。

昔から目立ちたがり屋でリーダーになることも多くて、ギャルサーの代表もやりました。母には「家に帰ってくるな」と言われて、公園や駅で寝て過ごしてホームレスのような経験もあります。

ギャルサーでイベントやって、そこで出会った人と19歳のときに結婚して子供が産まれました。仕事は、キャバ嬢。私が働いていたお店では訳ありの人たちが多く、ヤクザの人たちに暴言吐かれることもありました。一般的な常識が通用しなかったので、そこで精神面鍛えられましたね。

ーー実際に危険な目にあうことはなかったのですね。

危険なことはありましたよ。でも運良かったんですよね。母にはギャル・キャバクラ時代にすごく心配されましたし、怒られもしました。「もしお前がパクられても迎えに行かないから自分で尻拭いしろ」って言われたのに当時は全然聞きませんでしたね。

今思えば本当どうなっていたかわからないなと思います。でも元々は真面目だったので「これはだめ」ってことは意外とやっていなかったです。

小学生ぐらいまでは普通の子供でした。といっても幼少期に両親が離婚したり、継父が自殺したり、大変だったのかもしれません。今でこそ笑っていられますが、自殺未遂もしています。

当時は辛かったですけど、人生なんとかなりますね。

ーーその後はどうやって立て直したのですか

自分がこうして変わったのは離婚がきっかけだと思います。子供がいたのでひとりでどうにかしなきゃいけませんでした。キャバクラで働いていましたが、ずっとその仕事をするわけにはいかない。

母に相談して「歯科衛生士なら夜勤もないし、国家資格だし、将来食には困らないよ」と教えてもらい、歯科に興味を持ちました。

中卒から歯科衛生士に

まず歯科が自分に合うかわからなかったので歯科助手としてやれるかどうか試してみたんです。最初に勤めたところは訪問歯科。その後に一般歯科でも働いてみて、1年半ぐらいしてから「悪くないな」と思って衛生士学校に通い始めることにしました。中卒だったのでまず高卒認定試験を受けてから衛生士学校に。

高等職業訓練という母子家庭が受けられる制度があったのでお金もらいながら学校に通わせてもらいました。ちょうど衛生士学校1年目のときに子どもが小学校に上がるぐらいの時期だったので大変でしたよ。

初めは赤点取らないように真剣に喰らいつこうと思っていたんですが、赤点どころかむしろ成績良かったんです。今まで勉強つまらなかったのに始めたら意外と楽しかった。元々、好奇心旺盛なので知らないことを知るのがすごく好きなんです。勉強ってその最たるものですよね。

特に衝撃的だったのは、訪問診療で感じていたことを学校の授業で習い、それが実際に合っていたこと。当時は何も知識なかったのですが、歯がある人とない人の認知症の重症度が目に見えて違うことを不思議に思ってました。学校でその話を聞いたとき「やっぱりそうだったんだ!」と驚きましたし、もっと知りたいと思うようになりました。

それと実習へ行ったときにお世話になった歯科衛生士さんのことがずっと記憶に残っています。一番最初に担当してくださった衛生士さんの、患者さんに対する愛や気遣いが本当に素晴らしかったんです。

患者さんと話すときは前回の話を全部覚えていたり、作業中に待たせることがあったら「雑誌持ってきますね」と声をかけて飽きさせなかったりと工夫していて、私のなかで歯科衛生士像が固まりました。

歯科業界を変えていきたい

無事、国家資格を取得して歯科衛生士として働き始めましたが、その医院の治療内容がひどくて精神的に参っちゃったんです。自分はこういうことのために 衛生士になったわけじゃないんだよなって。衛生士の友達の話を聞いても似たような人が多かったので「歯科業界クソか」と思い、何かできないかなと模索し始めました。

ーーこの業界が嫌になってやめたくならなかったのですか。

苦労して歯科衛生士になってるので、そうはならなかったですね。自分は衛生士がやりたいからじゃあ業界を変えようって思ったんです。私、負けず嫌いなので自分が去るよりもそっちを変えてやろうと思いました。業界を知らないからこそ、その分怖いものがないんでしょうね。

昔から「人生なんとかなる。ならなかったことなど一度もない」って思ってます。事故とかあちらの世界の人に怖いこと言われて、ちょいちょい死にそうになってることもあるんですけど、今元気に生きてる。なるようになるんじゃんっていう連続ですね。

夜の仕事から昼の仕事に移行したときは教養もモラルもなく社会の当たり前を知らなかったので、それは苦労したかもしれないですね。夜の仕事ってすぐ休めるんですよ。その代わり罰金があるんですが、また稼げばいいやぐらいで罪悪感は全然なくて。でも、昼で同じことをしたらやっぱりすごく怒られますよね。

ただキャバクラでの経験がよかったこともあります。指名制なのでお客さんに来てもらうには自分を気に入ってもらう必要がありました。だから話し方は気をつけましたし、今までいろんな人を見てきたのでクレーム対応は得意になりましたね。

これには歯科衛生士にも通じる部分があります。言い方ひとつで円滑にできるんだったら本望ですよね。ちゃんと伝えられて、患者さんの言いたいことも分かると仕事しやすいです。歯科衛生士に大事なのって結局コミュニケーションですが、一番難しいじゃないですか。今までの経験からもし私にわかることがあって誰かの助けになるんだったら何でも与えるし、聞いてくださいと思う。

自分が一度絶望してるからこそ、そんな衛生士さんがいるのが嫌なんですよ。自分が発信することでそういう人たちの希望になったらなと思ってるんです。

ーー過去のこともSNSで発信していますが、隠したいと思ったことはありますか。

全然ないです。後ろめたいと思ったら自分の否定になっちゃうじゃないですか。今の自分があるのは全て過去の自分があるから。それで「バカだね、アホだね」って言われても事実ですし、いろんな人がいるのはわかってます。なかにはありのままを言っても受け入れてくれる人もいるのでそれでいい。

SNSのいいところって画面閉じたら終わりなんですよね。もう嫌だって思ったら見なきゃいいんです。だって現実世界はこっちなんだから。色々言われても今自分は仕事こんなふうにちゃんとしてますって言える。

ハミガキ団による歯磨きパーティー

最初にSNSを始めたのは情報収集のためでした。歯科関係者をフォローしまくっていたらハミガキ団の活動を知って「こんな面白いことやってるんだ」と思い、ハミガキ団を主催しているキージャム先生のところに絡みにいったんです。

ギャルサー時代のおかげでパラパラ踊れたので、東京で行われた歯磨きパーティーで余興としてパラパラを踊らせてもらいました。そこからメンバーに加えていただいて今に至ります。

自分の中で歯科は医療でお堅いイメージでした。もっとフランクにできたらいいのにって思ってたんです。実際、歯科以外の友達に「歯医者ってどんなイメージある?」と聞くと、「高圧的」「何回も通わなきゃいけない」「意味わかんない」とボロクソに言われて。先生や衛生士さんのことがちゃんと伝わってないんだなと思いました。

ハミガキ団がやってることをもっと世間に広げて、歯科が世の中の人に親しみやすくなるきっかけとなりたいです。

一般の人にはもっと自分の口の中に興味持ってもらい、医療従事者の方にはハミガキ団が活躍できる場となってもらいたい。診療所だと患者さんと話せる時間は限られてるじゃないですか。歯磨きパーティーは人と近い距離でラフに話せて「ありがとう」言ってもらえるので充実感が得られます。

私生活も歯科が入ってきていますが、それは苦じゃないです。むしろ楽しんでます。好奇心旺盛なのでいろんなことするのが好きなんです。歯科衛生士もやりたいけど、他の事もやりたい。歯科衛生士の仕事はやりがいもあるのでやり続ける選択肢もあるんですけど、衛生士にとらわれずにやりたいことやると思う。必要とされるところにいきますね。

ーー悩みや辛いことはありますか。

何もないです。本当に楽しい。心配性ではありますが、能天気です。なるようになっちゃうんで。今の状況が嫌なのであれば自分が変えてしまえ。そう思えたら気が楽になりました。世の中が良いように変わっていってくれればいいなと思ってます。

私は運もいいと思うし、人にも恵まれてる。今すごく幸せです。

編集後記

壮絶な人生を送っていてもそう思わせない直向きな楽天家である元黒ギャルさん。

辛い経験をたくさんされてきたからこそ、人一倍ひとの痛みがわかる歯科衛生士さんなのだと感じました。

「なんとかなる」とあっけらかんとしている姿に威厳があります。

元黒ギャルさん、ありがとうございました。

歯科衛生士・本吉ひとみ