学生生活や歯科衛生士の仕事が上手くいかず、悩んでいる方はいらっしゃいませんか。

今回は歯科衛生士・長谷ますみさんのお話をお届けします。

さまざまな苦難を乗り越え、現在はクリニカルハイジニストの育成事業の経営者として活躍している長谷さん。迷っているあなたの道しるべとなってくれることでしょう。

長谷ますみ(ながたに ますみ)大阪府立公衆衛生専門学校卒業後、一般開業医に10年勤務。その後フリーランスとして独立し、クリニカルハイジニスト育成のためのmint-seminar事業を立ち上げ、2011年にNDL株式会社設立。

ーー歯科衛生士になる前はどんな学生でしたか。

私、昔は勉強が苦手でした。学校の授業よりも歯科医院のバイトのほうが楽しくて、授業中はよく寝ていましたね。

上手くいかない実習生活

臨床になるといろんな疑問が浮かんでくるので、実習に行った際には「なぜその治療をしているのか?」という理由を問うような質問をしてしまうんですよ。

そしたら「そんなことは疑問に思わなくていい。」と言われてしまいました。

当時の私は、”学生は疑問に思ったことは質問していい”と思っていたのです。すると実習先からクレームの連絡が学校に入り、担任から呼び出しがかかりました。しかも、そういったことが2回続いてしまって。自分の中でとても挫折感でした。

二度目のお断りを受けてからは、私はもう質問しちゃだめなんだととても萎縮してしまいました。自分のしたことが全て裏目に出るのでそれからは隅の方でじっとしていましたね。

ーーせっかく意欲的に動いているのにもったいないですね。

今思えば若気の至りです。周りのことが見えていませんでした。

実習のときに失敗していたので、就職するのも怖かったんです。だから就職見学に行かせてもらったときも私は遠巻きにしか見てませんでした。

でもその医院の先生は「ちょっとこっちおいで」と呼んでくれ、“なぜこの治療をしているのか”を説明してくれたんです。

私が今まで怒られてきたことをこの先生は教えてくれるんだ!と嬉しかったんですよ。そこが一番最初に就職したところです。

勉強が苦手だった私が文献を読んで毎週レポート提出

私が入ったのを機に月1の院内勉強会が始まり、更にレポート提出の宿題が出されました。しかも、毎週

変に負けん気が強かったので、宿題を出されるなら「先生のぐうの音も出ないようなレポートを出してやろう」と思ったんですよね。

意味が分からないことを片っ端から線引いて疑問点・要点・感想を先生が赤ペンを入れる隙間もないぐらいぎっしり書くんですよ。でも先生も、その行と行の隙間に赤字でいっぱい書いてくるんです(笑)。

結構しんどかったですよ。自分としては頑張ってるつもりでもまだまだ足りないことが多かったので、怒られて毎晩泣き寝入りすることもありました。

でも今の勉強は無駄じゃないと思ったので、辛いという理由でやめたくなかったんです。気づいたら10年勤務していました。

結婚して退職、その後フリーランスに

フリーランスになってから仕事が本当になくなりました。あ、こういう現実なんだと思い知ったのです。そこでも挫折を味わいましたね。

仕事をもらっても単発で終わり、2回目の連絡が来ないこともありました。

そんななか、「医院のやり方を全部変えるから長谷さんの持ってるものを全部提供してくれ。」と言ってくださった先生がいました。先生は先生で、頑張っても予防ができずにどんどん悪くなっていく現状に悩んでいたみたいです。

今までは医院側が仕事の内容を決めていましたが、今回初めてすべてのカリキュラムを任せてもらいました。だからそこの衛生士さんには自分を全面的にさらけ出して指導し、出来る限りのことを伝えていこうと思いました。

すると、予定してたプランが終わってからも「また来てほしい」と言ってもらえたんです。依頼のメールが来たときはある意味カルチャーショックでした。そのときになってやっと今まで仕事が来なかった理由が分かりました。

恥ずかしながら、それまでは歯周治療ができることは自分の専売特許だから教えてはいけない、教えてできるようになってしまったら私は必要なくなってしまうと思ってたんですよね。

自分の技術が秀でて難しい患者さんを治せますとやっていても、できるのは私ひとり。世の中はそれを必要としない。自分が持ってるものをきちんと伝え、後進が育ってはじめて一人前と世間は認めてくれるんです。

人と人を繋げたい想いから始まったスタディグループ

その歯科医院をきっかけに指導の仕事が増えました。そして数件の歯科医院で勉強熱心な若い衛生士さんを見ていると、この子とこの子会わせたいなと思うことが多かったんです。

勉強したいって言うと周りから引かれたり、同じ医院のスタッフとの温度差に余計な気を使うんだったら、やりたい人同士で集まったらお互いに相乗効果出るんじゃないかと思いました。それがみんとの会を立ち上げたきっかけ。

ーーNDL mint-seminarの原点ですね。

本当は会社にしたくなかったんです。私はもともと商売人よりも職人という意識があったので。

でもあるときに、「会社を立ち上げる本当の面白さは人を育てることにある」と知りました。ようやく自分のやりたいこととリンクしたんですよね。

ーー今後はどんなことをしていきたいですか。

私が携わったことがその人の歴史の中の1ページになってもらえたら嬉しいなと思ってます。

私が目指しているのは新人向けに検査、規格写真の撮影、初期治療から予防をし、1年で一人前に育てること。そしてベテラン向けに自費の歯周治療ができる衛生士を育てること。

前はね、1年で育つのは無理だと思ってました。でも、月一回指導に行っている医院の新人さんが1年で育ち、できる手応えがありました。患者さんを任せられるレベルまで持っていけるコースにしたいと思っています。

日本でも時給5000円の衛生士を目指す

自費のほうは10年以上のキャリアがある人限定。ちゃんとしたハードルをクリアした者がそういう資格を得られる環境をつくりたいです。

しっかりとした保険診療と自費診療の違いを明確にし、自費の歯周治療ができる歯科衛生士とそうでない歯科衛生士の差別化も明確にしたい。

自費の歯周治療はできれば歩合制が理想ですね。例えば患者さんから1時間2万円ぐらいのチャージをして、そのうちの25%の5000円が担当衛生士の報酬となる。

それだったら医院も稼いでくれる衛生士さんを欲しいと思うでしょう。

衛生士さんもやりがいがあったらやめないです。頑張ったことが自分に返ってくる道筋があったら夢が広がりますよね。プロフェッショナルな意識を持つレベルの高い衛生士さんが長くいてくれて、若い子はそれを目指してくれたら医院も安泰じゃないですか。

だから今は1年で一人前になれる新人を育て、自費で行う歯周治療のシステム作りを構築するのが私だけの最後の仕事かなと思っています。

編集後記

どんなに若手の歯科衛生士さんにもフレンドリーな長谷さん。

多くの挫折や気づきを経験されていたからこそ、今の温和でやわらかな長谷さんがあるのだと感じました。

技術と知識と優しさを兼ね備え、後輩たちに夢を与えてくれる歯科衛生士さんです。

長谷ますみさん、ありがとうございました。

歯科衛生士・本吉ひとみ