歯科衛生士のみなさん、歯科技工士さんとの交流は普段からありますか。

技工士さんは何を求めてるんだろう?印象や石膏についての正解がわからない

補綴物が違っていたらもっとプラークコントロールがしやすいのに

こんなふうに悩むこともありますよね。

そこで今回は、歯科技工士の傍ら、海外講演や歯科衛生士向けセミナーでも活躍されている株式会社Beaux Arts Dental Lab代表の歯科技工士・関 克哉さんにお話を伺いました。

歯科衛生士のみなさんに知ってほしい歯科技工士さんの本音をご紹介します。

関 克哉(せき かつや)東北歯科技工専門学校、国際デンタルラボテックスクールを卒業した後、デンタルパロアルトに入社。2005年Beaux Arts開業、2013年株式会社Beaux Arts Dental Lab設立。

衛生士さんとの繋がりって全くないんですよね。チームで治療をするにはお互いが情報を知ってないといけないのに、まだまだ足りないです。

先生が治療して、技工士が作って、セットして終わり。でも、治療はあくまでも原因の除去だけで、そこからがスタートになりますよね。

最後にまた衛生士さんのところへ戻っていくので、ドクターと技工士のエゴで作ったような補綴が入っちゃうとだめなんですよ。

クラウンの形態によってはプラークコントロールも良好になれるはず。だから技工士は衛生士さんが何を求めてるのか情報がほしいんです。

衛生士さんのほうがその患者さんに対してプロフェッショナルなわけですから、どんどん提案してほしい。


歯間ブラシ1本にしても、普段この患者さんがどういう性格で、どういう技術があって、どういうものを使っているのかっていう情報を指示書に書いてもらいたい。同じサイズのものをセロハンテープで貼り付けて送ってもらえるといいですね。

技工物が変形する原因

あともうひとつ伝えておきたいのが、技工物の再製のほとんどが模型の変形が原因ということ。技工士が下手というだけじゃないんですよ。

※模型の変形によるバイトのずれ

アルジネートで変形があると技工士が気が付かないまま作るのでセット時にトラブルが起きます。衛生士さんってやることいっぱいあって忙しいと思うんですけど、もっと印象や石膏の大事さを知ってほしい

午前中に取った印象を保湿箱に入れたままにしてお昼休みに一気に流すとか、正直ありえないので。

いつ注ぐのがいいのですか。

取ってすぐお願いしたい。室箱に入れてたとしても変形は始まってるので、できるだけ早く流したほうがいいです。

管理の仕方も難しいんですよ。箱に入れてるといっても箱自体も適当なプラスチックのケースじゃないですか。学校によっても教えることが違ったりして、正しいのを知らないんですよ。

管理の仕方としては、箱にウェットティッシュやスポンジを敷いて水を染み込ませます。アルジネートが水に直接触れてしまうと水分過多になってしまうので、その上に割り箸やスノコのようなものを置いて直接水に触れないようにします。

本当は縦長のタッパーでなかが保湿された状態にして、スタンドに差し入れるのが一番良いです。トレーから溢れでたアルジネートが下に触れることで石膏注いだあとも上に押し上げられて変形するから。

そういうのをクリニックにも知って欲しい。ただあんまり無理して置き場所に悩んだりするのも大変なので、そこの医院に合うものがいいと思います。

僕は関わらせてもらってる医院さんには今までやってたことの何がいけないかを説明して、改善できるところから始めてもらえるようにお話しします。

石膏の流し方のコツはありますか。

石膏を流すためのインストゥルメントも大事ですね。普通のスパチュラだとでかすぎるし、探診とかだと小さすぎる。そういうのをうまくコントロールできるインスツルメントがあります。

細かく知りたい医院さんは僕を呼んでくれれば教えます(笑)

駄目なのがわからないとできないんですよ。だめな石膏っていったら“気泡が入ってはいけない”ぐらい。

でも、流しやすいからって印象面に水分残ったままで石膏流しちゃいけないんですよね。綺麗に咬合面出なくて、ラボに届いた時点でスカスカな砂みたいな状態になっています。

以前、スタッフのみなさんに院内セミナーで石膏について指導しに行ったら、驚くほど再製減ったんですよ。スタッフの子たちもただ石膏注げばいいと惰性でやってたんですが、今は楽しいと言うんです。

僕はなるべくスタッフさんには『今日送ってくれた石膏グッド!』とフィードバックするようにしています。そしたらこれでもかってぐらい、かっこいい石膏送って来てくれるんですよ。

褒めてもらったら嬉しいですよね。

お互いの仕事を評価しあえたらいいですよね。技工士がクリニックから電話をもらうときって、90%が再製の電話

だから「患者さん喜んでだぞ」とドクターや衛生士さんからコメントもらえるとモチベーションになります。頑張った甲斐あったと思えるじゃないですか。今回良かったよともらえるだけで美味しいお酒が飲めるんです。

あとこれは先生にもお願いしたいんですが、シェードテイキングの写真は来院してからすぐに撮ってもらいたいです。治療で長時間乾燥した状態になると色味が変わってしまうので。

シェードテイキング時のポイント

辛いのは下積み時代

技工士って夜中までとか泊まりとか当たり前なんですよ。でも僕はそれでいいと思ってるんです。下積み時代として何年やる、と期限決めちゃえば頑張れるじゃないですか。

寿司屋と同じで技工士は職人仕事です。寿司屋でも3年握らせてもらえないなんて当たり前。短期間でやらせてもらって、お金をもらいながら技術も教えてもらえるなんて甘い話です。

僕は患者さん担当させてもらうまで3年ぐらいかかりましたね。社長の模型を作っても『こんなんじゃだめだ!もう一回作り直せ。』と言われたりして。

それは辛い・・・

どの仕事に就いても楽な仕事ってない。怒られようが何しようが、やり続けるしかないんです。

でも別に怒られても死ぬわけじゃない。死ぬこと以外かすり傷じゃないですか。自分が至らなくて直して欲しいと思うから怒ってくれるんであって。

下積み時代って、ひとつひとつ自分のあらを潰していく作業だと思っています。師匠の言ってることを理解して、自分の中に落とし込んで、引き出しをいっぱい作るんです。

そうやって積み重ねていくと、この引き出しを開ければクリアできるなって頭の中で組み立てられるようになり、引き出しがあるだけスムーズに仕事ができます。だから最初の3年ぐらいは大変なんじゃないかな。3年やったら絶対面白いですよ。

僕、技工しているときも楽しんでます。物を作ってるときは好きな音楽聞きながら作業して、プラモデル作ってるみたいな感覚なんですよ。夢中になってると時間も忘れて作業して、「あ、もうこんな時間だった!」ってよくあります。

そのなかでも挫折したことはあるのでしょうか。

何度かありますよ。一生懸命やっても報われなくて悔し泣きをしたこともあります。開業すると全てが自分の責任になるので。

勤務してたときは、最終的な責任は社長が守ってくれていました。でも一人になると守ってくれる人が誰もいないじゃないですか。

自分ではパーフェクトだと自信をもって納品したものが、ぐうの音も出ないほどボロクソに言われて何も言えなくて黙っちゃったことがありました。家に帰ってきてから泣きましたね。布団かぶって嗚咽するぐらい。

自分で何でもできる気になってたけど、社長がどっかしらで自分を軌道修正して良い方向に導いてきてくれたんだろうなって思いました。そこからですかね、仕事の見方がちょっと変わったのは。

自分のなかでオッケーと思っても、自分の師匠だったらどうするだろうと考えて作るようになりました。もう一人自分を置いて、その人が見てたらどう思うか見つめ直すようにしてます。

社長になると王様で、自分の判断がすべてになってしまうので、シチュエーションごとに何度も確認するようにしてます。

これからの歯科技工士

現在、CAD/CAMが普通になってきて、機械を操作をすることに違和感を感じない世代が技工士になっています。人と接したり、自分の手の感覚で作ることを知らない子たちが増えていきますよね。

僕らみたいなアナログ人間じゃダメだと思うし、デジタルだけな人でもダメ。これから技工士はアナログとデジタルを使い分けできる人材が求められます。

だからもうちょっと人間味があって職人的な感覚を持ち、どちらのよさもわかった上で、デジタルとも融合していけるような技工士が増えてきたらいいなと思ってます。

編集後記

歯科医師と歯科衛生士の埋まらない溝を第三者として入ってくれるお兄さん的存在の歯科技工士・関克哉さん。

技術も知識も歯科技工士の枠を越えて追求していく姿はまさに職人仕事。

歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士、歯科助手が連携して患者さんに向き合っていかなければならないと改めて感じました。

関克哉さん、ありがとうございました。

歯科衛生士・本吉ひとみ