令和元年5月23・24・25日に神奈川県民ホール・ワークピア横浜・横浜産貿ホールにて第62回春季日本歯周病学会学術大会が行われました。

まだ5月だというのに30℃を超える夏日であった24、25日。そんななかスーツ姿で学会に集い、賑わいをみせました。

今回は5月25日の午前中に行われた歯科衛生士シンポジウム「つながろう!歯科衛生士!地域で支える周術期等口腔機能管理」のレポートをお届けします。

登壇者は3人の歯科衛生士で、周術期等口腔機能管理の病院側からと診療所側からの所見、病診連携「縁リッチメントプロジェクト」を立ち上げた経緯を伺いました。

周術期等口腔機能管理で歯科衛生士がおさえておきたいポイント

一人目は東邦大学医療センター大森病院がんセンターがん口腔機能管理部の久保田玲子さん。

久保田さんは「症状が出てからの介入だと遅いので、治療開始前から歯科衛生士が介入できるようにしていくこと。

感染経路のなかには根尖病変や歯周病などの歯性感染から起こります。歯科介入によって予防が期待されるため、歯科治療が鍵

私たちの介入の仕方で治療内容が変わっていくこともあります。ワンパターンではなく、治療内容に合わせた口腔機能管理を行う必要があり、そのために医科歯科連携が求められています。また、継続的な管理も必要なことから、かかりつけ歯科医院の役割は重大です。」

と病院側からの視点で訴えかけました。

かかりつけ歯科医院における周術期等口腔機能管理〜認定歯科衛生士の立場から症例を通して思うこと〜

二人目はほりぐち歯科の鈴木綾子さん。

かかりつけ歯科医院にて周術期等口腔機能管理、腎移植・乳がん患者の症例を交えながらのご講演でした。

地域のかかりつけ歯科医院が担う役割とは、地域住民の生涯にわたる口腔機能の維持・向上を目指し、地域医療の一翼を担うものとしてその責任を果たすことができる歯科医院をいいます。

鈴木さんは「患者さんは乳がんを患った際の治療前の口腔ケアを周術期センターではなく、病院と連携した上でかかりつけ歯科医院で行うことを希望されました。歯医者嫌いだった患者さんは知らない場所でのケアを不安に感じていた様子。以前から、かかりつけ歯科医院にてしっかりと信頼関係を構築していたおかげでスムーズに進めることができました。

そのことから、かかりつけ歯科医院の歯科衛生士の役割は、症状発現前から歯周病のメインテナンス・管理を行い、良好な口腔内状態を維持しておくこと。信頼関係の構築をし、継続的な来院につなげること。周術期の不安な患者さんの気持ちに寄り添い、精神的なサポートをすること。地域連携により、途切れのないケアを提供すること。」

と、かかりつけ歯科医院ができることを伝えてくださいました。

歯科衛生士の病診連携〜縁リッチメントプロジェクトの立ち上げ〜

最後は公益財団法人東京都保健医療公社 荏原病院の北澤浩美さん。

北澤さんは「病院と診療所がそれぞれの役割を分担し、お互いに連携しながら医療を提供するために”縁リッチメントプロジェクト”を立ち上げました。このプロジェクトは、荏原病院が主催している”歯科衛生士地域連携会”のことを指します。

10年前に一度プロジェクトを立ち上げたものの、当時は上手くいかずに立ち消えてしまったんです。

その後、病院での勤務中に、病棟入院患者への口腔ケア活動と他職種とのチーム活動を通して気づいたことが3つありました。口腔状態は年齢や健康状態、御本人を取り巻く環境などによって変化を余儀なくされることもあること、経口摂取への第一歩は口腔衛生及び口腔機能の維持・向上であること、他職種は私達が思っている以上に口腔を観察する習慣がないこと。

このことから、病院だけで患者さんの健康を回復・維持・向上させることは不可能であると感じていました。

健康なとき、入院したとき、退院したとき…。患者さんの変化を含め、人生に寄り添えるのがケアを担っている歯科衛生士です。だからこそ歯科衛生士が連携する必要があり、ともに学び合い、正しい知識と情報を共有する場をつくることが”継続的に患者さんを支えるきっかけになる”と感じて再び立ち上げることを決意しました。」

と言い、奮闘の日々が始まったそうです。

歯科だけで動かないよう病院に協力依頼をし、歯科医師地域連携会で講演するなど広報活動を行って活動を再開。周術期口腔機能管理や摂食嚥下をテーマに縁リッチメントプロジェクトの講演会を開催し、参加者は合計118名にものぼり、盛り上がりをみせました。

最後にはプロジェクト立ち上げ成功のポイント「ラッキー7の法則」として、これから何かを始めようとする歯科衛生士に希望とアドバイスを与えてくださいました。

《ラッキー7の法則》
1.やる気
2.声をあげる
3.歯科衛生士主体で企画・活動する
4.必要なときだけ歯科医師の力を借りる
5.活動報告を怠らない
6.わくわくすることを考える
7.継続する

超高齢社会にともない、高齢者は生活や療養の場が状況によって変化しています。これからの医療を支えるためには患者さんへのシームレスな医療サービスが提供される必要があります。病院と歯科診療所との地域連携を改めて考えさせられる一日となりました。