歯科衛生士の仕事にやりがいを感じられず、目の前の作業をこなすだけのつまらない毎日を過ごしている方はいらっしゃいませんか?

そんな方に、歯科衛生士・田内友貴さんの話を送ります。

モデルとしての経歴を持つ傍ら、鬼軍曹として手厳しいインプラントのアシスタント指導(Expert Surgical Assistant Program)をしている、田内さん。

仕事に対する意義を見いだすような鬼軍曹インタビューをお届けします。

田内 友貴(たうち・ゆき)神戸松蔭女子学院大学を経て、2008年に兵庫県歯科医師会附属歯科衛生士学院を卒業、歯科衛生士免許を取得。インプラントセンターでの経験を重ね、臨床や同校非常勤講師の傍ら2018年CortezSDy(コルテスディ)株式会社を設立し、経営者としてもその手腕をふるう。

モデル経験を持つ異色な歯科衛生士

大学卒業後、歯科衛生士になる前はモデル活動もしていました。今も見た目には気を使うように心掛けています。「メイクとか洋服とかが派手だ」と言われることもありますが、ファッション雑誌から出てきたような女性が学術的で、バシッと講演で真面目な話をしていたらかっこよくないですか?いい意味のギャップを持ちたい。

雑誌やTVを見てくれていた多くの若手の歯科衛生士さんから声を掛けてもらえる機会がたくさんあります。勉強して、お洒落もして、プロとして働く!欲張りだけど、歯科衛生士っていいなと思ってもらえるかっこいい見本になっていきたいです。

ーーなぜ歯科衛生士の仕事を選ばれたのですか。

外科医になりたい夢がありました。

そんな夢はあるものの、当時は女の子がバリバリ働くことに抵抗があり、夢は夢のまま女子大に進学して華の女子大生ライフを送ることになったのです。

卒業後はモデルなどしながらのんびりと過ごしていました。たまたま友人の歯科医院をお手伝いするご縁があって医療に携わることになり、またその道を目指したい気持ちが蘇ってきました。

そのときちょうど歯科衛生士学校が2年制最後だった訳です。資格を取っておいてもマイナスにならないかなと思ったのがきっかけ。勉強していくうちにインプラントのメインテナンス方法が確立されていないっていうから「じゃあ私がしてやる!」ぐらいの気持ちで国内外問わず学会に足を運び、様々なところで猛勉強しました。

実は私、すごく不器用でした。だからこそ人一倍、努力しました。自分の苦手な部分を知り、そこに目を向けて努力するのは成功の秘訣だと思います。伸び悩むときに、自分が嫌だなって思うところに進んでいけたら急速に成長します。

私はわからないことがあったら必ず調べて勉強し、練習も毎日しましたし、今でもします。練習機材を貸してくださいと頭を下げてお願いして苦労したときもありました。だってプロじゃないですか。1年目だろうが、20年目だろうが、50年目だろうが、衛生士として職場に立ったら何年目だろうが関係ない。プロなのだから。

その後、鬼軍曹へ

今日も怒って泣かせました。大好きな後輩が泣いている姿を見ると胸が苦しいですが、それでも「泣くなら裏で泣いてこい!泣き止むまで絶対出てくるな。」と叱ります。辛いですが、本当の愛だと思っています。

患者さんは患っていらっしゃるのです。そこで泣き顔見たらどうしたのってなりますよね。海外先進国では仕事中に感情をコントロールできないのは、仕事できないレッテルを貼られます。辛くても歯を食いしばって今いる患者さんを守るのが医療人だと思います。

…でも、鬼軍曹を批難する人もいます。

今の世の中は「こんなに弱い人間が頑張っているのに何で責めるのだ。」という風潮があります。でもその時に治療を受けた患者さんは実験台でいいのでしょうか。ちょっとミスしたものが劇薬だったので人死なせましたって成り立たないですよね。自分自身が患者さんだったらどんな人に診てもらいたいか。答えは一つだと思います。

ーーだから一流のメンバーが育っているのですね。秘訣はありますか。

残業しないこと。

与えられた仕事を決められた時間までに終わらせるようにすれば、その分の時間が密になるから。だらだら残業するよりもオフになって有意義な時間過ごした方が絶対プラスじゃないですか。リフレッシュしないと次の日に持ち越せないです。

だけど、まだまだ未熟な人が時間を費やさないことが当たり前と考えることも違う。満足に仕事もできないうちに「いたしません」って言うなんてありえない。オフタイムだけを主張するのは間違っている。お給料をもらうことの意味をもう一度考えて欲しいなって思います。

一生懸命やって時間かけたらそりゃ患者さんは喜びますよね。だけどその分、削られる人がでてしまうのですよ。例えば一人目がお母さん、二人目がおばあちゃん、三人目が愛する人だったとして、誰が削られていいのでしょうか。誰も削れないです。どの患者さんも同じ。だからオンタイムで終わる力をつけなきゃいけない。

私はオンタイム診療を為し得るために、できなかったスタッフにどちらがよいか問います。1つ目は手を抜いて時間内に。2つ目は努力して時間内に出来る技量を身につける。もちろんみんな答えは2番目。「だったら今すぐ勉強してこい!」って怒鳴ります(笑)。患者さんみんな大事なのだから誰も削れないのです。

ーー仕事以外の時間も重要なのですね。

オフの時間は自分の時間です。皆さんの人生にはたくさんの可能性がある。選択肢がたくさんあるなかで、あなたは人生の中で何を選びますか。「自分がどうなりたいか」なのです。

そこで自分が足りないと思ったら勉強に使ったらいい。したくないならしなきゃいい。”勉強しなきゃならない”と思うから苦しくなるのです。up to youです。他が決めることじゃない。

地位とかお金とか何もかも手に入れたいと思うなら相当な努力が必要です。そういう人は一流のクリニックに行けばいい。でもそうなりたい人ばかりじゃないですよね。みんなそれぞれ自分に合うクリニックに行けばいいと思う。患者さんも全員が全員、究極な治療を求めているわけじゃないのだから。

ーー田内さんの理想はありますか。

私は歯科業界を更によくしていきたいです。そのために講演を通して、自分の熱い気持ちを多くの人に伝えています。自分が多くの時間を勉強に捧げた分、みんなにはそのエッセンスを持って帰ってもらいたいです。

これからは歯科衛生士も論文を読んだり臨床で学んだりしてプロフェッショナルな意見を出していき、自分発信で伝えていかないといけない。有国家資格者の”歯科衛生士”として。

自分のハートだったり、勉強だったり、理論だったり…いろんなものを確立して、歯科衛生士として本気で向き合うことが歯科衛生士の本当の地位向上になるのではないかなって思います。

ーー今後の展望を教えてください。

昨年に株式会社を設立し、歯科以外の仕事も経営者としてスタートしました。慈善事業を含めグローバルにみんなの笑顔が溢れ、鬼のように仕事していっぱい泣いて笑って楽しい仕事をできる場を作り続けたいと思います。

直近では熊本震災の講演をし、4/21(日)には東京にて札幌震災のチャリティー講演を企画しています。一つ一つの仕事を積み重ね、人との出会いを大事にし、誠実に楽しくプロフェッショナルな歯科衛生士オーナーで、これからも頑張りたいと思います。

編集後記

ゆとり世代が活躍していくこの時代に鬼軍曹と呼ばれている田内友貴さん。逃げ出したくなるほど厳しい。

それでも多くの後輩が必死で追いかけるのは、”人助け”を主軸に生きている田内さんの人柄があるから。

「なんとなく生きるのか。歯を食いしばって踏ん張ってみるのか。」

自分の人生を決めるのは結局、”It’s up to you.”=あなた次第です。

田内友貴さん、ありがとうございました。

歯科衛生士・本吉ひとみ